ウォッシャブル全裸

this is my life

人生初・ホラー映画について

生まれて初めてホラー映画を観ました。

きのう日本で公開されたばかりの「ミッドサマー」(監督/ アリ・アスター)です。

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ホラー映画とは思えない画面の明るさと華やかさ、それに反して異様に不穏な「祝祭」の文字と主人公(ダニー)の表情が、この映画は他のホラー映画とは違うぞと訴えかけてきます。

いわゆる「暗くてよく見えないから怖いホラー」や「ドッキリさせて怖さを演出するホラー」を観ることが出来なくても、これなら安心して真のホラーを楽しめそうですよね。「暗くて見えない恐怖」や「突然現れる衝撃」は所詮、小手先の技術にすぎません。料理を辛くするのに唐辛子をアホみたいに入れて客の味蕾をバカにする料理人と同じです。

何をもって人間は創作物を怖いと思うのか?グロテスクなもの?絶望感?焦燥感?それとも画面の不穏さ?違和感?

いったいどんな映像が私の精神を滅多打ちにしてくれるんでしょうか?

私はその謎を探るため、池袋の奥地へと足を踏み入れた―――

 

 

**鑑賞後**

 

 

結論から申しますと、上記のおおむね全部です。

まだ公開されて日が浅いので、ネタバレに配慮し、あまり詳細なことは書かないようにしたいのですが、他の感想記事と比べるとネタバレになるかもしれません。これから見に行くぞ!楽しみだ!という人は、読まないことをお勧めします。

 

 

 

 

 

感想を大きく3つに分けて書きます。

 

①グロい

まず驚いたのが「ゴア表現(グロテスク)の多さ」です。

なぜか「こんなに綺麗な映画作るならグロには頼らないだろう」という謎の思い込みがあったのですが、ハチャメチャに裏切られました。ホラー映画とはこんなにゴア表現の多いものだったのか、と新たな知見を得ました。とにかく血が出たり内臓が出たりしてると怖いものです。そんな生物的なところに訴えかけてくるのはひどい。

あと鑑賞後に気づいたのですが、他の作品と比べて暴力的なシーンに「宗教的背景」があるため、尚更こわいのかもしれません。

ただ人が人を殺してる場面は、それはそれで生々しく撮ればショッキングです。しかし「そういう風習だから」「昔からやっていることだから」という文脈で非人道的な映像を見るのは、ただの殺人より余程ショックが大きい。何十年何百年も前の虐殺事件や拷問方法を調べてわざわざ怖くなる時ってあると思うんですが、それと似ています。

しかも画面が常に昼なので、アチャ~これなら暗い方がまだマシだよ~という気にさせられます。世界まる見えもビックリのモロ出しである。

ただゴア映像になるまでの「これからグロいもの出しまーす!」という振りが結構長いので、薄目で観たり手で顔を覆って指の隙間からしっかり見るなど、自己防衛の余地があるのは助かりました。

不意打ちもありました。監督はきっとお茶目な人なんですね。

 

②伏線が上手い

他のホラー映画と比べたことは無いのですが、「あっこの絵伏線だ!」などと、伏線が非常に分かりやすいので面白かったです。

ただ脈絡なく気持ち悪いことが起こるのではなく、最高に怖くて不快なシーンのために何個も布石を見せてくれるので、見ている側としては「この絵はこの人の末路を暗示しているんだ…」など事前に予想を立てることができ、それが徐々に積み重なって、不穏な空気や不安な感情を掻き立てられ、最終的に恐怖へと昇華していくような表現が多かったです。非常に勉強になりました。

まず恐ろしい結末が暗示されておいて、そこへ着々とストーリーが運ばれていくのは非常に恐怖を感じますし、しかし同時に奇妙な高揚感も得ていた気がする……。

 

③明るいのに怖い

むしろ明るいからこそ怖いと言うべきでしょうか。この映画を観て、花冠とリネンのドレスとルーン文字が怖くなるとは思いませんでした。

さっきも書きましたが、明るいと血や肉など見たくないものも良く見えます。

カルト的なホラーの強い映像なので儀式や歌や衣装が独特なんですが、歌一つとっても、民謡独特の音程やリズムが既に怖いんですよね。エキストラの人も全員金髪碧眼の美男美女ばかりで、それもゾッとします。

怖いことをしそうな、見るからに凶悪な人物が、例えば拷問をしていても、創作物としては「まあそうだな」と思ってしまいますが、一見無害で平穏な場所にこそ本当の恐怖が映えるんですよね……

 

 

結論から言うと、期待通りの恐怖感を得て非常に満足です。

最後の方はビビり散らかしていたので、映画に出てくる知らない道具は全部拷問器具に見えました(一回もそういったものは出てこないのですが)。ワァあれで人殺すんだ…と思っていたらくじ引きの機械だったりして、もう内心が大変でした。それくらい繊細な緊張感がずっと続いていて、映画ひとつ観終わっただけなのに物凄く疲れていました。

絶対に感情移入はしないようにしよう、と思っていたのですが、もしかすると、感情移入してしまった方がラストシーンで爆発的なカタルシスを得られたかもしれない、とも思います。

事前に調査したところアリ・アスター監督が「これはホラーじゃなくて失恋映画だよ」などと供述していたらしいのですが、なるほど冷静に考えるとそうだったかもしれません。とにかくカルト的ゴア表現の嵐なので、それに圧されて忘れがちでしたが、後から思い返せばぜ~んぶ主人公ダニーのための出来事だったような気がします。その証拠に、一緒に映画を観た友人達も口をそろえて「人間関係を断捨離する映画」「愛をめぐる壮大な冒険」「倦怠期のカップルにお勧め」などと言っていました。

ただ一つ確実に言えるのは、ネットで「めっちゃ爽快感がある」「天国」「これは救済」など吹聴している人々は全員精神病院に行くべきだという事です。申し訳程度にエンディングに明るい曲を流せばいいと思っているんでしょうか。エンドロールで大困惑してしまいました。

ついでですが、エロシーンもめちゃくちゃに濃かったです。あとで確認したらR15指定でした(後で確認するな)。日本版は修正が入っているとは聞いていたのですが、あまりにもすぎて笑ってしまいました。エロが癒しです。

 

早く書き留めておきたくて乱文になってしまいましたが、「ミッドサマー」に興味を持ったらぜひ映画館へ行ってください。私は絶対に2回目は観ません。ありがとうございました。

 

 

 

PS

パンフレットは映画を観る前に買っておき、鑑賞後にゆっくりお家で読むのをお勧めします。ここに書ききれなかった見どころは全部パンフレットに書いてあります。900円とは思えないクオリティです。おすすめです。